個人で作成する無料サービスは悪なのかもしれない

ネット広告は頭打ちで、有料課金でお金を取るのがこれからの主流となっていくというニュースを最近よくみる。ちょっと検索してみたところ、2008年12月の記事でも以下のようなものがある。

新聞業界の不況を説明する際に「新聞・テレビの不況は、広告がネットに『引っ越し』したのが原因」との声が多いが、そのネット広告市場にも頭打ち感が出てきた。国内では主要インターネット企業の過半数の業績が悪化しているほか、米国市場でも、ここ1年ではオンライン広告市場の縮小が続いている。ネット企業の中には「景気が回復すればネット系メディアに広告は戻る」との声もあるが、予断を許さない状況だ。

ネット広告市場「減速」 一過性の出来事なのか : J-CASTニュース

つい最近まで、国内SNS市場ではミクシィ(mixi)の存在感が圧倒的で、収益モデルは「広告」だとされてきた。これに異変が起きている。競合各社の売り上げの内容を見ると、ユーザーからの「有料課金」が、広告収入をしのぐほどの有力な収入源になっている。SNS上の自らの分身「アバター」の衣服などを着せ替える際の課金が収益に寄与しているものとみられるが、利用者は、言わば「着せ替えごっこ」に「カネを落としている」形で、専門家からは「正直、理解できない」との声ももれる。

「こんなところに金脈が」 SNS各社「アバター」が大収入源 : J-CASTニュース

僕なりに、なんでこういう状況が発生しているのかというのを考えてみようと思う。

ネットサービスは無料

現実世界には「無料より高いものは無い」という言葉がある。例えば無料タクシーというものが出てきて、「うちのタクシーは一切料金をいただきません」という看板を掲げて走り回っていたとしよう。それで、無料タクシーだからみんなこぞってそのタクシーに乗るかというとそんなことは無くて、みんな気味悪がって乗らないと思う。なぜかというと現実世界では大抵のサービスには料金が発生するという概念が出来上がっていて、無料タクシーというものは存在しないと思うからだ。

だけど、これがネットになるとまったく話が変わる。

僕もそうだけど、大半のネットユーザはWebサービスで無料というのことに抵抗は無い。僕は有料の完璧なサービスと無料の劣化版のようなサービスが存在したとすると、無料を選ぶ。そのサービスを選ぶときに、現実世界のような「無料より高いものは無い」という考えは全く出てこなくて、何も考えずに無料を選ぶ。多分みんな一緒で、これには意識の根底に「ネットのサービスは無料」という意識があるんだと思う。

競合サービスの増加

確かに今まではネットは広告による収益などでサービスに対する料金を徴収しなくても収入を得ることが出来た。ただ、それは今までが競合するサービスが少なかったからだと思う。競合するサービスが少ないがゆえにユーザを独占することができて、そのおかげでネットの広告でも十分な収入を得ることが出来たんだろう。ユーザを独占しなくても一般社会にネットが広がればユーザが増えて同じようなサービスが増えても大丈夫だろうと思うかもしれないけど、そんな単純なものではない。

例えば、あるサービスを提供しているサイトがひとつだけあってそれを使用するユーザが1000人いたとしよう。で、それと同じサービスを提供するサイトがひとつ出来たとする。そうすると、同じサービスだから単純にユーザ半々で使えば使用するユーザは500人に減少する。ユーザは足し算で増えていくけど、サービスを提供するサイトが増えると割り算で減っていく。となると、ネットを使用するユーザは増えるけど個々のサービスを使用するユーザというのは減っていくんじゃないかと僕は思う。

ネット課金の難しさ

じゃあ、ネットサービスはどうやって稼げばいいかというと有料課金で設けるのが一番早いんだろう。でも、ここで非常に大きな問題が出てくる。それはネットでお金を払うという行為の難しさだ。

クレジットカードで料金を徴収するということも出来るんだろうけど、ここでは信頼性という問題が出てくる。ネット上でクレジットカードの番号を打ち込み、暗証番号を入力するという行為に僕は非常に抵抗を感じる。余程信頼があるサイトでなければ一般ユーザがクレジットカードの番号と暗証番号を入力するなんてことはしないだろう。

じゃあ、次に出てくるのはネットマネーだ。でも、このネットマネーというものが存在することを知っているユーザがどれだけ存在するだろうか?パソコンを普段から使用している人であればネットマネーというものが存在することは知っているだろう。しかし、一般的なパソコンのユーザはネットマネーなんて知らない。そして、ネットマネーを持っている人なんて極少数の人だと思う。

現実世界のようにポンとお金を払えるシステムが出来ればお金を徴収することも簡単で、お金を払うユーザというのも増えると思う。その点で、携帯の有料課金はよく出来ていると思う。携帯会社から通話料と一緒に引き落とされるというのはユーザとしては非常に分かりやすいし、あまり抵抗無く使用できる。PCのネットにも同じような仕組みをプロバイダ?等で行い通信費と一緒に徴収する仕組みが出来上がれば、PCのネットでも抵抗無く有料課金が出来るようになると思う。でもそれができるのはまだまだ先の話になるんだろう。

個人が作成する無料サービスの悪いところ

こうやって考えていくと個人で作成しているネットの無料サービスっていうのは案外悪いことなのかと思えてくる。自己満足でサービスを作って無料でいろんなものを公開すればするほど、Webサービスは無料で使用できるという考えが一般社会に広がってお金を払ってネットのサービスを使用するのが馬鹿らしくなっていくという悪循環が出来上がるんじゃなかろうか。会社としてお金をもらわないとサービスを維持できないような状況も起こってきているのに、無料で使用できる劣化版のサービスが乱立するってのはよく無い傾向なのかなぁとかも思う。

前に書いているように簡単にお金を払えるような仕組みが出来上がればユーザもお金を払ってくれると思うんだけど、それはまだまだ先の話になるだろうし、今は少しでも早くサービスを使用するにはお金がかかるということをユーザに分からせることが先決なのかもしれない。そして、それを邪魔するのは個人が作成する無料サービスなのかなぁって思う。

まとめ

現実社会では何かのサービスを受ければお金が発生するのは当たり前。この考えがネットでも出てくればもっと健全な社会が出来るんじゃないかな。景気回復にお金を使わせたいのであれば、ネットの有料課金をもっと簡単に出来る仕組みを作ったほうが早いんじゃないかなぁ。ネットの有料課金が簡単に出来るようになって、「ひとつのサービスを使用するために月に最低でも100円使わなければならない」みたいな法律を作ってしまえばものすごいお金が動くんじゃないかな。儲かるのはネット業界だけかもしれないけど、どこかが儲かりだせばお金を使う人も増えるわけで少しは景気が回復したりしないのかな。

まぁ、そんな法律が出来たら僕は困るんだけど・・・。